2020年秋に「しばらく立ち止まる」との表現で、開発中断を発表して3年。すでにマスコミの興味がなくなり、新たなニュースも見かけなくなっていましたが、2023年2月7日、ついに三菱重工がスペースジェット開発中止を正式発表。今後は開発中断に至った総括と事業撤退に伴う航空会社や関連企業、自治体などへの補償など、残った債務は山ほどあることでしょう。

 スペースジェット開発を担ってきた三菱航空機も会社整理となる見込みで、まもなく我々の前からその存在が消えることになるかもしれません。今後は残された飛行試験機の扱いと、豊山町の名古屋空港に隣接して作られた最終組立工場や塗装工場などの行く末が気になります。

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★また懲りずに血税5兆円を…!? 国策「日の丸ジェット」の見果てぬ夢に「エリート官僚」たちが固執する「大ひんしゅくの理由」

  

週刊現代:また懲りずに血税5兆円を…!? 国策「日の丸ジェット」の見果てぬ夢に「エリート官僚」たちが固執する「大ひんしゅくの理由」

 週刊現代がちょっと読んでみるかというタイトルの記事を掲載したので、ちょっと読んでみました。以下はその一部。

 国の出資金500億円を棄損させた経産省が性懲りもなく「日の丸ジェット機」開発の国策プロジェクトに再び動き出し、霞が関や市場でひんしゅくを買っている。

 最大の問題は、肝心の民間企業側が乗り気ではないことだ。三菱重工のある幹部は「経産省から『あと一歩だった』などといくら煽てられても、経営危機まで取り沙汰されたトラウマは消えない。ジェット機開発に再び挑もうなんて雰囲気は皆無だ」と吐き捨てる。

 川崎重工やIHIなど他のメーカーも、旧MRJの悲惨な末路を目の当たりにしているだけに「甘言には乗らない」などと消極的だ。

 週刊現代の記事なので、それなりにフィルターをかけて読む必要があるうえ、結局のところ、単に官僚政治を皮肉るつもりの記事なんだと思いました。




★国産ジェット旅客機再び開発へ 愛知の企業は?

  

テレビ愛知ニュース:「失敗した「国産ジェット旅客機の開発」再び動き出すか  「もう一度がんばってみよう」愛知の企業の思いは

 テレビ愛知がポートメッセなごやで開催された「航空・宇宙機器開発展」の会場で、出店している航空機関連企業ブースの中の「タカギスチール」にインタビューしたニュースがYouTubeとウェブサイトで公開されました。

 航空機産業としては、海外の航空機メーカーからの部品受注だけでなく、国内メーカーからの安定した部品受注を受けたいのは至極当然のこと。スペースジェットの開発中止で振り回されたことは忘れて、再び夢をと思っている中小の部品メーカーは少なからずあることでしょう。

 経産省がこのような航空機産業を育成するために、再び国産ジェット旅客機の開発を目指すというのなら、何もゼロから再び始めなくても、三菱重工にスペースジェットの機体設計データを開放させ、国内複数メーカーで再度FAAのTC取得を目指してはどうでしょうか。

 少なくとも部品メーカーは再びゼロから始めるリスクを回避できますので、経産省としての思惑は十二分に果たせると思います。それに三菱スペースジェットとして開発した機体をこのまま葬り去るのも、あまりにももったいないことです。




★「国産旅客機つくるぞ!」経産省が今ブチ上げたワケ 「MSJ失敗」の轍は踏めない…どんな戦略が?

  

「国産旅客機つくるぞ!」経産省が今ブチ上げたワケ 「MSJ失敗」の轍は踏めない…どんな戦略が?

 航空ジャーナリストの「相良静造氏」が、乗りものニュースに『「国産旅客機つくるぞ!」経産省が今ブチ上げたワケ 「MSJ失敗」の轍は踏めない…どんな戦略が?』という記事を投稿されていたので、ちょっと内容を拝見してみました。

 記事では、『経産省の本気度がいかほどかわからないが、MSJ失敗を身に染みて知る関係者が活躍しているうちに、失敗のままでは「もったいない」、それを「有効活用」するのが良いとの判断は理解できる。

 仮に再挑戦する機体がTC取得にまでたどり着いた場合、MSJの轍を踏まない手段は考えられるのか。ひとつ有効なのではないかと一部で浮上している策は、米国のTC取得前に日本の国土交通省航空局がTCを発効し、日本国内でのみ運航し知見を蓄えた末にFAAのTCを取得するというもの。

 日本の航空機産業が取り組む航空自衛隊の「次期戦闘機」は英伊と共同開発なだけに、開発力も生産への雇用も3か国で分割される。そのため、民間旅客機にも再度望みを託した可能性もある。

 MSJの開発が始まったのは、YS-11の生産が終了した1973年から35年後だったが、経産省が2035年の量産を目指すとするだけに、開発のゴーサインにさえも時間的な余裕はないと言える』と言った内容でした。

 次回はひとつの航空機製造メーカーに任せるのでなく、国が主導して複数の製造メーカーに開発を分担。国内での飛行を先行する目的で国交省のTCを先行取得して、その後FAAのTCを取得するという策も検討しておく。確かにその手法なら特定のメーカーに過度な負担がかからず、また途中で開発を中断するというリスクも軽減できそうです。

 しかし、個人的にはそこまでして「国産旅客機」に拘る必要があるのかという想いがあります。それに国内しか飛べない国交省のTC取得でデビューしたら、「日本も中国と同じじゃないか」と揶揄される覚悟は必要です。




★三菱重工のジェット開発子会社が解散 3月末、資産処理にめど

  

三菱重工:MSJ資産管理株式会社の解散に係るお知らせ

毎日新聞:三菱重工のジェット開発子会社が解散 3月末、資産処理にめど

 三菱重工は1日、事業撤退した国産ジェット旅客機スペースジェット(旧MRJ)を巡り、開発を担った子会社の旧三菱航空機が3月31日付で解散したと発表した。

 大半の資産の処理にめどが付いたためとしている。昨年4月に「MSJ資産管理」に社名変更していた。三菱重工グループの業績に影響はない見通しという。今後、残る清算手続きを進める。

 これで三菱重工としては、旧MRJプロジェクトの清算の目途が立ったと言ったところでしょうか。何だかさみしい気持ちでこの記事を読みました。




★経産省の国産旅客機再挑戦は果たして成功するのか

  

メルクマール:「MRJ敗北」から日本は復活できるか? 経産省が国産旅客機の再挑戦発表、海外「軍産複合体」対峙に求められる大きな覚悟

 経産省の国産旅客機の再挑戦発表ニュースについて、メルクマールの記事を引用して考察してみます。

 MRJは残念な結果に終わった。長年の開発努力にもかかわらず、三菱重工は2023年2月、採算が見込めないため開発を中止すると発表した。これに対し、自動車メーカーのホンダはMRJと同様、長い苦難の時期を経て、実際に飛行させるために必要な型式証明と耐空証明を取得し、航空機市場に参入した。そして、同規模の航空機のなかで最多の販売数を記録し、大成功を収めている。

 MRJはすでに航空会社からかなりの受注を獲得し、米国で有効な市場を見いだしていた。しかし、必要な投資額はビジネスジェット機とはかけ離れたものであり、三菱重工業はそのリスクに耐えられなくなっていた。現在、航空機製造は欧米が圧倒的にリードしており、中国やロシアも先行している。今後の課題は、こうした開発の必要性を疑問視する人たちに対して、いかにわかりやすくその必要性を示すかである。

 中略

 重要なのは前を向いて挑戦することであり、さらに前述したように、この研究開発の成果は、他のさまざまな分野にも応用できるだろう。特に、現在日本が進めている宇宙開発の分野には大いに関連性があるのではないだろうか。

 このプロジェクトを成功させるためには、情報技術の進化に対応したソフトウエア開発のように、できるだけ多くの主体が自由に開発に参加できるオープンな研究体制が確立されなければならない。まさに国民全体で支える開発プロジェクトであり、航空機開発国としての日本の地位を復権するときだ。

 三菱重工の失敗が技術的なものであれば、このような方向性でいいと思いますが、私にはそれだけではないように感じます。FAAが型式証明を発行するのにあれこれ難癖をつけていたとするならば、アメリカが航空産業だけは日本に負けないぞという意思表示であったように思えてならないのです。




★官民で次世代国産旅客機開発を目指す国の新たな戦略案まとまる

  

NHKニュース:三菱重工業のMSJ撤退受け 航空機産業の国の新戦略案まとまる

日本経済新聞:国産旅客機開発、再挑戦の成算あるか MSJ撤退1年

産経新聞:国産旅客機、17年に再開発へ 航空の脱炭素化へ官民で5兆円投資 経産省が新戦略策定

 経済産業省は27日、2035年ごろをめどに官民で次世代の国産旅客機を開発する案を示した。三菱重工業が撤退した「三菱スペースジェット(MSJ、旧MRJ)」の反省を踏まえ、一社単独ではなく複数社で開発を進める。再挑戦の成算は見えにくい面があり、慎重に進める必要がある。

 いいニュースだと思いますが、経済産業省はなぜ三菱重工がスペースジェットの開発を中止したのか、もう少し研究したほうがいいのではないかと思います。三菱重工は実際に空を飛ぶことができる旅客機を製造できていたのに、なぜそれを放り投げたのか?答えはひとつ。FAAのTCを取得できなかったこと。

 つまり国産旅客機を商業ベースに乗せるには、FAAのTC取得が絶対条件なのです。この難題をどう乗り切るのか、それを明確に打ち出してから再開しないと、また同じ轍を踏むことになりかねません。私個人的にはHONDAジェットを見習い、アメリカで開発すべきと思いますが、それでは経済産業省の立場がないですわね。




★MSJ挑戦の歴史伝える あいち航空ミュージアム展示へ

  

読売新聞オンライン:「MSJ挑戦の歴史伝える あいち航空ミュージアム展示へ」

 読売新聞が小型ジェット旅客機「三菱スペースジェット(MSJ)」の試験機が、「あいち航空ミュージアム」に展示される見通しとなったという記事を掲載。

 関係者によると、愛知県は三菱重工の工場内にある三菱スペースジェットの飛行試験機「10号機(JA26MJ)」の移設や施設の改修、展示スケジュールなどの調整を進めている。展示時期は未定だが、2025年度中に実現させたいとの声がある。

 いいですね。ようやく三菱重工が重い腰を上げる決心をしたようです。そもそもあいち航空ミュージアムはMRJを展示することを主たる目的に整備されたようなものですので、これでようやく主役が登場するといったところです。




★旧MRJ最終組立工場を研究拠点に転換へ 三菱重工、次世代航空機を設計

  

旧MRJ最終組立工場を研究拠点に転換へ 三菱重工、次世代航空機を設計

 三菱重工がスペースジェット(旧MRJ)」の量産に向けて愛知県から取得した県営名古屋空港周辺の用地を、次世代の民間航空機の設計・製造に関する研究拠点に転換することが分かった。SJの開発中止に伴い県と改めて契約を結んでおり、将来に向け航空機産業の発展を図る。

 関係者によると、三菱側は組立工場と技術試験場の用地を航空機の研究拠点として活用する方針を県に説明し、既に県との契約を結び直した。塗装・整備工場用地については、まだ県に活用方針を伝えていない。

 次世代の民間航空機というのは、いったいどんなものなのでしょう?




★スペースジェット開発中止スクープが年間1位

  

Aviation Wire「スペースジェット開発中止スクープが年間1位」

 Aviation Wireが2023年1年間によく読まれた記事として、「スペースジェット開発中止スクープ」が年間1位だったことを発表。2月6日午後4時3分に掲載し、Yahoo!ニュースや日経テレコンなど契約先各社へ配信。確かにどこのメディアよりも早く伝えていました。

 Aviation Wireが配信したのは公式発表の前日のことでしたから、外れていてほしいと願ったことを覚えています。初飛行の2015年と並び、2023年が忘れられない年になってしまいました。




★MSJの代替機選定、ANAホールディングスが24年度に本格化

  

ニュースイッチ「MSJの代替機選定、ANAホールディングスが24年度に本格化」

 日刊工業新聞「ニュースイッチ」は、ANAホールディングスが開発が中止となった「三菱スペースジェット」の代替機材について、2024年度から本格的な選定作業に着手する。新たに導入を検討するのは100席クラスの次期小型機。芝田浩二社長は「全ての候補を詳細に検証する」と語った。機材の検証に1年程度かけ、2025年以降に意思決定するとみられるという記事を配信。

 芝田浩二社長は機材の検証に1年かけると述べているようですが、選択肢は多くはありません。もし、スペースジェットと同サイズの88席クラスで選ぶなら、エンブラエルのERJ-175-E2一択ですが、現在エンブラエルは開発を中止しています。100席クラスにサイズアップするのならエンブラエルERJ-190-E2かエアバスA220-100の2択。

 何とも言えませんが、アフターコロナで日本国内の航空重要は回復しているし、ANAはエアバスとのつながりも深いので、私はエアバスA220-100を選択するような気がします。あとは100席超クラスの機材を導入するデメリットとして、CAの乗務員数が1名増えることによるコスト増でしょうね。




★MJの本質 座談会(下)

  

中日新聞12月28日朝刊7面 MJの本質「座談会(下)」

 中日新聞12月28日朝刊、「MJの本質」番記者3人の座談会の3回目。おそらく今回が中日新聞が掲載する最後の「MJの本質」となるのでしょう。千秋楽です。今日は3人の三菱スペースジェット番記者による総括が文面になっていました。新聞記者のみなさんですので、ただの飛行機好きの私たちよりも感性が鋭く、また取材を通じて三菱内部の人からの直接の声を拾集めたでしょうから、彼らの感じたことすべてが実に印象的でした。

 驚いたのは今回初めて?3人の番記者の写真が掲載されたのですが、中山記者はお名前から女性であろうと推測していたものの、長田記者も女性であったこと。つまり3人のうち2人が女性であったということです。別に男女の優劣を言う気もなく、女性では務まらないとも思いませんが、男性社会の三菱重工と三菱航空機に2人の女性が取材を続けたことは意外でした。逆に女性だから話してくれた三菱のエンジニアや幹部もいたかもしれませんけどね。

 お三方、これまでの取材おつかれさまでした。




★MJの本質 座談会(中)

  

中日新聞12月27日朝刊7面 MJの本質「座談会(中)」

 中日新聞12月27日朝刊、「MJの本質」番記者3人の座談会の2回目。今日のテーマは「型式証明」取得と技術力。もしもが許されるなら、MRJ開発プロジェクトをアメリカで実施していたら、もしもTC取得をアメリカでFAAから先に取得していたら、TC取得できていたのではと言われますが、今回はその日本の審査機関である国交省について。

 番記者3人も実は取材していて国交省のもたもたが目に余ったことでしょう。それに付き合わされた三菱航空機にしても、正直なところ「いい加減にしろ」と思っていたのではないかと推測します。

 後半は日本のデジタル化の遅れが、機体のコンピューター開発を海外の技術力に頼らざるを得なかったのではと述べていますが、航空機に限らず今や何でも機器はシステムで動くもの。今の日本に何が足りないのか、そんなことも考えさせられる内容でした。




★MJの本質 座談会(上)

  

中日新聞12月26日朝刊9面 MJの本質「座談会(上)」

 中日新聞12月26日朝刊に、終わったはずの「MJの本質」記事がありました。朝食時に新聞を1枚ずつめくっていて、「あれ?終わったんじゃなかったっけ?」と思って記事に目をやると、それはスペースジェット番記者3人の座談会を記事にしたものでした。

 先回の最終回の記事をスクラップした際、私が「番記者による論評があってもよかった」と書いたのを読んでくれたかのような今回の座談会記事。これこそが地元に根付いた中日新聞であり、そうでなくてはただの「まとめ記事」で終わってしまったことでしょう。

 私はかつて、名古屋空港の展望デッキで当時のMRJが試験をするのを、暇さえあれば待ち続けていました。ずっといたこともあって、地元民放TV局のディレクターやNHK名古屋放送局の記者に声をかけられたりしましたが、中日新聞の記者から名刺をもらった記憶はないので、この3名の方と会ったことがあるかどうかわかりません。

 彼らの旧MRJへの想いがいかほどかわかりませんが、中日新聞にも飛行機好きの記者が何名かいることは間違いないですので、この3名のスペースジェット番記者も飛行機好きだったか、それとも取材をしているうちに好きになったかではないでしょうか。そんな彼らがどう感じながら記事を書いたか、そんな観点で目をやると「MJの本質」の本質が見えてくる気がします。




★MJの本質 第6部5 「リーダー不在 散った夢」<最終回>

  

中日新聞12月9日朝刊9面 MJの本質「リーダー不在 散った夢」

 中日新聞「MJの本質」第6部の5回目。今回のタイトルは「リーダー不在 散った夢」で、思っていた通り、残念ながらベラミー氏へのインタビュー取材は記載されませんでした。そして今回が第6部の最終回であり、中日新聞「MJの本質」の最終回でもあります。

 今回の三菱リージョナルジェット開発プログラムの記事のタイトルが「MJの本質」となっていて、「MRJ」でもなければ「SJ」でもなかったので、きっとこの「MJ」には何か意図があるのだろうと思っていましたが、番記者 はやはり三菱の「M」をタイトルに入れたかったのではないでしょうか。

 結局、今回の最終回では三菱リージョナルジェット開発プログラムには、ホンダジェットの藤野氏のような強力なリーダーがおらず、失敗の背景として三菱重工の大企業病、もっと言えば宮永現会長によるワンマン運営が大きな要因だったのではないかということでしょう。

 ベラミー氏へのインタビュー取材が空振りに終わったせいか、ちょっと尻切れトンボ的な印象となった中日新聞の「MJの本質」シリーズ。社説ではないので無理かもしれませんが、番記者による論評があってもよかったなあと思いました。




★MJの本質 第6部4 「専門家急増 結束乱れ」

  

中日新聞12月8日朝刊13面 MJの本質「専門家急増 結束乱れ」

 中日新聞「MJの本質」第6部の4回目。今回のタイトルは「専門家急増 結束乱れ」で、残念ながら今日の記事はベラミー氏へのインタビュー内容ではなく、影たちのクーデター後のさらなるドタバタ劇でした。

 今日の記事の中心となっている「グローバルエキスパート」たちが名古屋空港ターミナルビル内にウロウロしていた頃を、今でも思い出します。記事もあるように、中には優秀な技術者もいたのでしょうが、3階展望デッキ前室やそこにつながる階段には外国人が溢れ、仕事の電話なのか自国にいる家族への電話なのかわかりませんが、彼らはいつも電話をしていました。

 部外者の私が見てもそれは異様な光景でしたので、三菱重工や三菱航空機内部での混乱は火を見るよりも明らかでしたね。さて、記事は今回が5回中の4回ですので、残すはあと1回。最後はベラミー氏へのインタビュー取材内容であってほしいのですが、もしかしたらその期待は裏切られるのかもしれないと思えてきました。




★MJの本質 第6部3 「影たちのクーデター」

  

中日新聞12月7日朝刊7面 MJの本質「影たちのクーデター」

 中日新聞「MJの本質」第6部の3回目。今回のタイトルは「影たちのクーデター」で、ベラミー氏が最高責任者になる前のゴタゴタが書かれています。三菱航空機内のゴタゴタ劇は当時からもいろいろ漏れ聞こえていたことではありますが、元外国人技術者の証言でこのような記事として読んだのはこれが初かもしれません。

 宮永さんがあえて無名な38歳の外国人技術者を最高責任者に抜擢したのには当然わけがあるわけで、その引き金になったのがこの記事にある「影(シャドー)」のクーデターだったということですね。次回で今回の続きが明かされることになるので、その前段を今日把握したところで、明日の記事を待つことにします。




★MJの本質 第6部2 「一技術者から頭角現す」

  

中日新聞12月6日朝刊9面 MJの本質「一技術者から頭角現す」

 中日新聞「MJの本質」第6部の2回目。今回のタイトルは「一技術者から頭角現す」で、中日新聞のSJ番記者が「アレクサンダー・ベラミー氏」に取材申し込みしたのに対して、直接取材を拒否されたこと、メールでの取材経緯などが冒頭で書かれています。ベラミー氏からすれば、日本の新聞社がなぜ今頃になって取材するんだという疑心暗鬼な気持ちがあったのでしょう。

 ベラミー氏がMRJ開発プロジェクトの最高責任者になったのは、部外者である私たちから見ても唐突でしたので、三菱重工の技術者たちが不満を持ったのも十分に理解できるところ。また、彼がボーイング社でもボンバルディア社でもいいですが、航空機開発の責任者でも務めたことがあるならまだしも、記事にもあるように突然現れ突然TOPに就任というのは、いくらなんでもやり過ぎだったと言わざるを得ないです。

 これがMRJ開発プロジェクトの中止に至った主たる要因かどうかは、部外者の私たちには判断できないところではありますが、メイドインジャパンを目指していた三菱重工の技術者たちからすれば、おもしくなかったことは容易に想像できることであり、統率の乱れが大きな波になって押し寄せたと考えても、全くお門違いではないと思いますね。




★MJの本質 第6部1 「命運握った 無名の38歳」

  

中日新聞12月5日朝刊1面 MJの本質「男は、自信たっぷりだった」

1面のつづき、7面記事「命運握った 無名の38歳」

 中日新聞が12月5日朝刊に再び「MJの本質」シリーズの連載を始めました。今回の1面記事タイトルは「男は、自信たっぷりだった」で、MRJ開発プロジェクトの終焉を迎えるきっかけのひとつになったと思われる「アレクサンダー・ベラミー氏」が登場。

 私は今までこのシリーズにベラミー氏が登場してこないことに疑問を持っていたのですが、すでに三菱重工と縁が切れ、取材もままならないために登場しないのかと思っていたので、今回のシリーズの最終章を飾るのにふさわしい人物であると思います。

 MRJ開発プロジェクトがFAAのTC取得に失敗したことで中止になったことは事実ですが、そこに至る背景には一枚岩ではない三菱重工の官僚体質と日本人技術者たちのおごりがあったことは、このシリーズでもすでに解明済のこと。しかし、それでもなお社員全員が結束して取り組めば、FAAのTC取得は可能ではなかったのかと私は思っています。

 そういう意味で、ベラミー氏を最高開発責任者に抜擢した人事が果たしてよかったのか、今回の最終章を担当する中日新聞のSJ番記者が解き明かしてくれることに期待しています。全5回とのことなので、今週はベラミー氏によってスペースジェット開発がどう変わったのか、毎日朝刊が配達されるのを楽しみに待つことにします。




★悲願の日本の翼 何を残したのか

  

NHKニュース「悲願の日本の翼 何を残したのか」

 ボーイングやエアバスといった欧米の大手メーカーの“下請け”に甘んじてきた日本の航空機産業にとって悲願だった国産旅客機。半世紀のブランクがある中で初飛行を見事に成功させ、「本当に飛ぶのか」とやゆする声を一蹴。エンブラエルやボンバルディアといったライバルメーカーに果敢に受注競争を挑んだ。

 世界の空に羽ばたくことはかなわなかったが、「その経験・教訓をむだにしてはいけない」という思いは、今回取材した数多くの関係者に共通していた。ことし6月、経済産業省は撤退に至った原因の究明などを行う会議を新設した。巨額の資金が投じられたプロジェクトの“遺産”をどう日本の産業の未来に生かしていくのか、そのことを戦略的に考える時期に来ている。

 この記事にあるように、経験・教訓をむだにせず、再び大空を目指す日が来ることを祈っています。




★久しぶりにIsaac AlexanderさんがX(旧Twitter)に

  

久しぶりにIsaac AlexanderさんがX(旧Twitter)にスペースジェット関連のポストをしました

 Isaac Alexanderさんのポスト内容を翻訳すると、「約13年間にわたってTwitter上で最も「バイラル」な投稿が、航空機の解体に関するものだったということは、いまだに私には信じられない」というものでした。

 「バイラル」って聞き慣れない単語だったので調べたところ、要は「拡散」というような意味のようで、自分が13年間投稿してきた中で最も拡散されたのが、2023年3月9日のモーゼスレイクでJA21MJが解体されている写真を投稿したもの。

 リポスト数は3700回を超え閲覧数も216.4万と圧非常に多いですね。また、リポスト先でも再リポストされていると思うので、実際の拡散数はどれほどだったのでしょうか。それくらいこの写真のインパクトが大きかったということですね。

 あれから早、半年経ちましたか。私は三菱重工がスペースジェット開発中止を正式発表してから1度も名古屋空港展望デッキに行っていません。だって、もういくら待ってもスペースジェットが大空に舞い上がることはないのですから。




★MRJの失敗は必然だった?

  

MRJの失敗は必然だった? 元航空機エンジニアの私が感じた「うぬぼれ技術者」発言への違和感、部下への責任転嫁に民間産業の未来なし

 MRJの失敗は必然だった? 元航空機エンジニアの私が感じた「うぬぼれ技術者」発言への違和感、部下への責任転嫁に民間産業の未来なし。

 この記事はテレビ愛知が放送したニュース番組での川井元三菱航空機社長と清水元国交省航空機技術審査センター所長のインタビューに対して異論を唱えたもの。

 2人の証言者の言い分にも理解できるところもあれば、それぞれの組織がバラバラだったことで、すべてがうまくいかなかったと思えなくもないです。しかし結論からすれば、日本には航空機を作り上げるノウハウがなかったとうのは揺るぎない事実。失敗が必然だったと考えるかどうかは、受け止め方次第ではないでしょうか。




★MRJ無念の中止 審査現場は「最後の最後まで混乱が続いていた」

  

MRJ無念の中止 審査現場は「最後の最後まで混乱が続いていた」 国交省の審査トップが証言

【MRJ計画中止】国交省の審査トップが証言 審査現場は「最後の最後まで混乱が続いていた」

 地元「テレビ愛知」が愛知のニュースの「MRJ開発中止」ニュースの続編。今度は「MRJ無念の中止 審査現場は「最後の最後まで混乱が続いていた」 国交省の審査トップが証言」という内容。今度の証言者は国交省航空機技術審査センター所長の「清水 哲氏」。国の審査機関のトップということもあり、なかなか重い口を開いて当時の話をされていました。

 TC取得の証明方法には基準がなく、どう証明するかは航空機メーカーが自身で探るしかないというのが定説。そこへノウハウのない三菱航空機の技術者たちが悪戦苦闘したのは容易に想像できますし、混乱があって当然でしょう。清水氏があのまま続けていればいつかは(TCを)取得できたと思うと述べたことが印象的でしたが、これがアメリカだったら違った結果になったと思えてならないです。




★元社長が激白 破綻の原因はたった1枚の書類

  

MRJ計画失敗、技術者が「謙虚さに欠けていた」 元社長が激白 破綻の原因はたった1枚の書類

【元社長が激白】MRJ計画失敗、技術者が「謙虚さに欠けていた」破綻の原因はたった1枚の書類

 地元「テレビ愛知」が愛知のニュースの中で、「MRJ計画失敗、技術者が「謙虚さに欠けていた」 元社長が激白 破綻の原因はたった1枚の書類」というニュースと動画を配信。

 元社長とは川井昭陽氏で、何代目の社長でしったけね。私は川井さんを名古屋空港の展望デッキで拝見したことがありました。三菱航空機の社長はみな、外様の雇われ社長ばかりだったので、川井さんには無念な気持ちが今もあるのでしょう。

 MRJプロジェクトの失敗要因は1つではないと思います。よく言われている三菱重工の会社体質、リーダー不在、国交省の能力不足ももちろん重要な要因ではあることは間違いないですが、本質的には今回川井さんが示したFAAのよるTCを、日本の航空機メーカーとして取得しようとしてできなかったことではないでしょうかね。




★『航空情報』10月号の特集は「さよなら MRJ」

  

『航空情報』10月号の特集は「さよなら MRJ」

月刊「航空情報」の公式Twitterじゃなく公式Xの情報です。

『航空情報』10月号完成いたしました。発売日は8月21日です。今回の特集は「さよなら MRJ」です。

ちょっと気になるので、まずは書店で拝見させていただこうと思います。




★三菱スペースジェットの夢、空飛ぶクルマとドローンが引き継ぐ…本社跡地に2社入居

  

読売新聞:三菱スペースジェットの夢、空飛ぶクルマとドローンが引き継ぐ…本社跡地に2社入居

 読売新聞が、「三菱スペースジェットの夢、空飛ぶクルマとドローンが引き継ぐ…本社跡地に2社入居」というタイトルの記事を掲載。

 三菱スペースジェットの事業撤退を決めた三菱航空機(現MSJ資産管理)の本社跡地に、空飛ぶクルマや産業用ドローンを手がける新興企業2社が活用することが1日わかった。愛知県が近く発表するというもの。

 三菱航空機の本社跡地というのは、県営名古屋空港ターミナルビルのこと。空飛ぶクルマを手がけるスカイドライブと、ドローン企業のプロドローンが入る。国産初のジェット旅客機として期待を集めたMSJの拠点を、次世代の空を担う新興企業が引き継ぐ形となると伝えています。

 さて、この2社は順調に離陸することができるのでしょうか。




★MJの本質 第5部番外編「完成機事業を諦めない」

  

中日新聞7/5朝刊 MJの本質 第5部番外編「完成機事業を諦めない」

 中日新聞が7月5日朝刊に突然、「MJの本質」シリーズ第5部番外編を掲載しました。

 今回のサブタイトルは「完成機事業を諦めない」で、経済産業省航空機武器宇宙産業課の呉村益生課長へのインタビュー記事を掲載。インタビューではMRJ開発中止をどう受け止めているか、成功に至らなかった要因をどう考えるか、国は500億円を支援したが、最終的に開発費は1兆円にまで膨らんだ。支援は十分だったか、開発で得た経験や知見をどう生かしていくか、日本として国産旅客機の開発はもう目指さないのかなど。

 今回インタビューした相手が税金を投入した経済産業省の官僚ということもあって、記者の質問内容に記者が希望するようなことばを選んで答えているという印象ですね。経済産業省は航空行政の監督官庁ではないので、記事を読んでいても「国として応援するが、国産機開発を再び目指すかどうかは国や政府が決めることではない」と、ことばを選んでいるように感じました。

 経済産業省はMRJ開発プロジェクトについては側面支援の立場だったので、このインタビュー内容でいいと思いますが、監督官庁である国土交通省航空局へも取材し、国交省としてどう総括しているか知りたいところです。ただし、やはり第3者的な答弁になることが容易に想像されますけどね。




★SJ撤退 株主に説明 三菱重工社長「経験、知見が不足」

  

中日新聞6/30朝刊:SJ撤退 株主に説明 三菱重工 社長「経験、知見が不足」

 三菱重工が29日株主総会を開催し、柳澤社長がスペースジェット事業について、皆さまの期待に応えられなかったことは大変心苦しく、厳しい選択だったが、ここで中止せざるを得ないと判断したと説明。中止までの経緯を説明する中で、90席級の機体で商用化に必要なTC取得にはさらに2年かかると想定していたことを明らかにした。

 主要市場の北米に投入を目指していた70席級の機体開発には5年かかり、毎年1000億円以上の投資が必要で「費用を改修できる蓋然性は低いと判断し、事業性を見通せないとの結論に至った」と話した。

 質疑応答で株主から試験機の活用について質問があり、加口副社長が「国内に4機の機体を残しており、どのような形で生かしていくかを検討している」と答えた。

 飛行試験機はまだ4機が健在のようです。ANAカラーの5号機(JA25MJ)は一度も飛んでないうえANAの了承が得られるかわからないので、最後に飛行試験を実施したスペースジェットカラーを施した10号機(JA26MJ)を、あいち航空ミュージアムに展示保存してほしいところです。




★三菱スペースジェットの開発中止要因は?日本の航空機産業の新戦略に活かせるか

  

ニュースイッチ:三菱スペースジェットの開発中止要因は?日本の航空機産業の新戦略に活かせるか

 経済産業省は航空機産業の成長戦略を再構築する。三菱重工の「三菱スペースジェット」開発中止を踏まえ、航空機産業における今後の完成機事業の方向性などを検討する。カーボンニュートラルへの対応をはじめ事業環境が激変する中、官民で課題をあらためて洗い出し、新戦略に反映する。航空機産業の競争力の維持・強化につなげる。

 航空関連企業や学識経験者らで構成する有識者検討会で航空機産業の課題や成長戦略を議論し、2023年度内にとりまとめる。スペースジェットの開発が完遂できなかった要因や飛行試験などで得られた知見を整理・分析し、戦略策定に生かす。山下隆一製造産業局長は検討会で「開発中止を重く受け止めている。この経験を検証することが今後に向けた出発点になる」と述べた。

 これは学識経験者やお役所の偉いさんたちが、ああでもないこうでもないと論議しても、答えは見えてこないのではないでしょうか。要するに日本で開発した旅客機では、アメリカ連邦航空局のTCはおいそれとは取得できないということに尽きるでしょう。




★ANA、スペースジェット代替機「現有機との親和性考慮」

  

Aviation Wire:ANA、スペースジェット代替機「現有機との親和性考慮」株主総会で賠償手続き完了報告

トラベルWatch:ANAHD、第78回株主総会。三菱スペースジェット開発中止は「ローンチカスタマーとして残念だが関係者に敬意」

 ANAホールディングスは6月27日、第78回定時株主総会をグランドプリンスホテル新高輪で開催。今年2月に三菱重工が開発を中止したジェット旅客機「三菱スペースジェット(旧MRJ)」について、賠償などの手続きは終了していると株主総会で説明した。

 福澤一郎副社長は「スペースジェットのローンチエアラインとして、大変残念。非常に厳しい判断を下されたと理解している」と述べた上で、「計15機の契約解除の合意書を締結し、4月に適時開示した。三菱航空機との納期遅延の賠償は合意済みで、すべての手続きは終了している」と株主に説明した。

 福澤氏は三菱スペースジェットが開発中止になり、会社自体も清算したことについて、「ローンチカスタマーとして非常に残念だが、事業に尽力した関係者には敬意を表したい」としたほか、すでに発注当時と現在では機材状況も異なることから、次期機材の検討を改めて行なっていくと説明した。

 ANAは旧MRJのローンチカスタマーですから、発注した航空機が完成することなく消滅したことが残念だったことでしょう。では代替機は何になるのかですが、「現有機との親和性を考慮」となると、エンブラエルはないかなと感じます。エアバスA220のほうが親和性に長けていると思いませんか。




★三菱重工「MRJミュージアム閉館のお知らせ」

  

三菱重工公式:MRJミュージアム閉館のお知らせ

トライシーは写真付きで伝えてくれました。

ねとらぼがなかなかいい記事を書いてくれました。

中京テレビニュース:「MRJミュージアム」閉館へ

Aviation Wire:MRJミュージアム、6月末で閉館 コロナで臨時休業、再開せず

 三菱重工公式ウェブサイトが、「MRJミュージアム閉館のお知らせ」をリリース。「現在、臨時休館中の当ミュージアムですが、当社SpaceJet開発活動の中止を踏まえ、この度6月30日をもちまして閉館いたすこととなりました。皆様の長年にわたるご厚情に心から感謝申し上げます。」というかんたんなあいさつ文のみ。

 実際にはすでにずっと休館していたので、今回のリリースは単に区切りをつけただけ。このリリースを読んで、すぐに行かなきゃということもできないのです。私は結局、一度も入館することができませんでした。

 このニュースを当日伝えたのは、私が知りうる限りでは「トライシー」と地元のTV局「中京テレビ」のみ。マスコミはすでに三菱スペースジェットはオワコンといつ扱いなのでしょうが、地元のマスコミなら最後の最後まで伝えてほしいと思います。ねえ、中日新聞さん!




★「スペースジェット」撤退原因究明など検証へ

  

NHKニュース「スペースジェット」開発撤退 原因究明など検証へ 経産省

TBS NEWS DIG「スペースジェット」撤退原因を検証 経産省も約500億円支援

 NHKニュースとTBS NEWS DIGがそろってほとんど同じ内容のニュースを配信。タイトルはNHKが「『スペースジェット』開発撤退 原因究明など検証へ 経産省」、TBS NEWS DIGが「『スペースジェット』撤退原因を検証 経産省も約500億円支援」。

 三菱重工が国産初のジェット旅客機「スペースジェット」の開発から撤退したことを受け、経済産業省は、撤退に至った原因の究明や国内の航空機産業の発展に向けた課題を検証していくことになった。

 これを受けて経済産業省は、撤退に至った原因の究明などを行う会議を新たに設け、6日の初会合には航空会社の幹部や学識経験者などが参加した。この中で三菱重工の幹部が、長時間の飛行試験は行ったものの安全性の認証を取得できず、設計の変更を繰り返したため、納期を合わせて6回延期したことなどを説明。

 そのうえで、撤退の原因を究明するとともに、開発に携わった人材や飛行試験の経験などをどのように生かしていくか、今後の国内の航空機産業の発展に向けた課題を検証していくことを確認した。

 多額の税金が投入されていることから、会計検査院に検査してもらったほうがいいような気がします。もちろん検査を受けるのは経済産業省など国の機関であって、三菱重工ではありませんけどね。




★MJの本質「何が引き継がれたのか」

  

MJの本質 第5部5「何が引き継がれたのか」

 中日新聞「MJの本質」シリーズの第5部の最終目。今回のシリーズはかつてMU300の開発を手掛けたこともある元三菱重工の林氏の回想録で、最終回は林氏が納期延期を繰り返すMRJプロジェクトに危機感を募らせ、人材育成に動いたが肝心の三菱重工の技術者がほとんど参加してくれなかったという内容。

 今回のシリーズで記者が訴えたかったのは、航空機を完成させるには個々の技術者の能力だけではなく、それを束ねる強力なリーダーが必要ということでしょう。そう、ホンダがあえてアメリカで航空機開発を行い、終始一貫して藤野社長に一任したことと、大企業病に蝕まれリーダーなしで右往左往した三菱重工の差がMRJとホンダジェットの差だとでも言いたいのでしょうか。

 ことはそれほどカンタンではないと思いますが、結果がそれを証明しているので、三菱重工はMU300の教訓を全く生かすことなくMRJプロジェクトを終わりにしてしまったと言わざるをえません。そして今回のサブタイトルでもある「何が引き継がれたのか」という林氏のジレンマで今回のシリーズは終わりとなりました。

 今回の記事は珍しく横長で掲載されたので、幅600ピクセルのサムネイル画像ではやや読みづらいと思います。拡大版を開いていただくと読みやすかと思います。




★MJの本質「誰もが森を見なかった」

  

MJの本質 第5部4「誰もが森を見なかった」

 中日新聞「MJの本質」シリーズの第5部の4回目。今回のシリーズはかつてMU300の開発を手掛けたこともある元三菱重工の林氏の回想録。今日のタイトルは「誰もが森を見なかった」とあるように、MRJプロジェクトという「森」を統括するリーダーや組織体制がなく、技術者という「木」が苦悩していたことを赤裸々に語られています。

 今日の記事で気になったのは、MRJのTC取得をアメリカではなく日本で行うことになった背景に、MU300のTC取得をアメリカで行ったことを国交省(当時は運輸省ですが)から怒られたことが語られていること。

 国のプライドがあるのでしょうが、それならそれなりの人材と組織を固め、三菱重工を全面的にサポートすべきだったと思いますね。スペースジェット開発プロジェクト中止の裏には、こうした三菱重工自体ではどうしようもない要因がいくつもあったことが推測されます。




★MJの本質「下請けで腕磨き 再挑戦」

  

MJの本質 第5部3「下請けで腕磨き 再挑戦」

 中日新聞「MJの本質」シリーズの第5部の3回目。今回はMRJプロジェクト開始とは少し離れ、名航の技術者たちがボーイングの下請けをすることで、ボーイングの製造技術を学び・盗んだという内容。三菱重工がボーイングの機体の多くの部品を請け負っているのは周知のことですが、それが技術者たちが航空機製造のノウハウを盗むためだったとしたら、スペースジェット開発中止はいただけないですね。

 記事の内容とは直接関係ないですが、今日の記事は初回と同じカラー刷りページでした。中日新聞は日本で初めてカラー刷りの新聞を発行したことでも有名ですが、昨日は白黒ページに掲載されてちょっと残念でした。今回のシリーズはあと2回。いずれもカラー刷りページに掲載されるとうれしいです。




★MJの本質「退路断ち オールジャパン」

  

MJの本質 第5部2「退路断ち オールジャパン」

 中日新聞が5月31日朝刊からに再び連載開始した「MJの本質」シリーズの第5部の2回目。MRJプロジェクト開始の裏に、MU300を手掛けた当時の三菱重工会長の意向があったことが記事になっています。今日の記事のミソはMRJプロジェクトは三菱重工だけでなく、トヨタや三井・住友など日本を代表する企業を巻き込んで「オールジャパン」を強調したことでしょう。ただし、それが結果につながったかどうかは別問題ですけどね。




★MJの本質「つながっていた開発の歴史」

  

中日新聞5月30日朝刊1面 MJの本質「つながっていた開発の歴史」

1面のつづき「いつ やる気になるのか」

 中日新聞が5月30日朝刊に再び「MJの本質」シリーズの連載を始めました。今回の1面記事タイトルは「つながっていた開発の歴史」で、かつて三菱重工が開発した小型機「MU300」の開発に携わった社員が、MRJプロジェクトを動かすに至った経緯を回想したもののようです。

 MU300といえば、ほぼ完成していたにもかかわらず、今回のスペースジェットと同じように完成直前で開発中断。アメリカの会社に売却したのち商業化され、大ヒット小型機となった三菱重工にとってはいわくつきの航空機。奇しくも同じように開発中断となった今、今後記者がどのような内容の記事にするのか、ちょっと楽しみにしようと思います。




★幻の国産旅客機 SpaceJet マニアックス

  

幻の国産旅客機 SpaceJetマニアックス

出版社:秀和システム
発売日:2023年6月2日
著者:青木 謙知
サイズ:単行本176ページ
価格:2,750円(税込)

 惜しくも開発中止が正式発表され“幻の国産旅客機”となった「SpaceJet(スペースジェット)」について、開発プロジェクトの全貌、旅客機としての技術的特徴、ライバルと目されていた旅客機との性能差などについて、長年、MRJ/SpaceJetを追い続けてきた旅客&軍事ジャーナリストの著者が総括。戦前からの国産旅客機計画の資料として所持しておきたい一冊




★動画“日の丸ジェット”の夢は幻に…三菱重工がスペースジェット開発から撤退 再開信じていた地元「言葉もない」

  

東海テレビの「NEWS ONE」が放送した番組がYouTube動画に公開されていました。

 東海テレビがローカルニュース「NEWS ONE」で放送した「“日の丸ジェット”の夢は幻に…三菱重工がスペースジェット開発から撤退 再開信じていた地元「言葉もない」」の動画をYouTubeで公開していました。

 私はこのテレビニュース番組を観ていなかったのですが、偶然YouTube動画に公開されているのを見つけました。今となって振り返ると、見るのが少し辛いようなニュースですが、ひとつの時代が終わったと総括しているよくできた番組だと思います。




“日の丸ジェット”の夢は幻に…三菱重工がスペースジェット開発から撤退 再開信じていた地元「言葉もない」

  

FNNプライムオンライン:“日の丸ジェット”の夢は幻に…三菱重工がスペースジェット開発から撤退 再開信じていた地元「言葉もない」【愛知発】

 FNNプライムオンラインが「“日の丸ジェット”の夢は幻に…三菱重工がスペースジェット開発から撤退 再開信じていた地元『言葉もない』」という記事を配信。なぜ今この記事なんだろうと思いながら読んでみると・・・。

 何だか以前に見たことがあるようなタイトルだし、内容も「あれ、これって」と思いながら見返してみたところ、4月23日に東海テレビが配信した記事そのもの。東海テレビはFNN系列なので不思議はないようなものですが、やはり今なぜこの記事をあえて全国ネットのFNNプライムオンラインが再配信したのだろうと思ってしまいました。




★スペースジェット失敗に漂う壮大な「虚無感」 国家プロジェクトを破壊する“縦割り行政”と今なお続く“対米従属”の宿痾とは

  

メルクマール:スペースジェット失敗に漂う壮大な「虚無感」 国家プロジェクトを破壊する“縦割り行政”と今なお続く“対米従属”の宿痾とは

 メルクマールが再び飛行機オタクのブースカちゃんの投稿を掲載しました。タイトルは「スペースジェット失敗に漂う壮大な「虚無感」 国家プロジェクトを破壊する“縦割り行政”と今なお続く“対米従属”の宿痾とは」。

 以前の投稿もよくまとまっていて的を得ていましたが、今回の投稿もなかなかいいと思います。本質的には三菱重工の大企業病が潜んでいると思いますが、縦割り行政の弊害やアメリカに依存しすぎている日本の構造上の問題もあると思います。いずれにせよ残念な結果になりました。




★三菱スペースジェット、米国試験機は解体済み 小牧は「検討中」

  

Aviation Wire:三菱スペースジェット、米国試験機は解体済み 小牧は「検討中」

メーテレ:国産初のジェット旅客機「スペースジェット」の開発断念を受け、会社名から「航空機」の文字が消えました。

中日新聞Web:スペースジェット全機の登録抹消 国交省、初号機含む4機

Aviation Wire:三菱スペースジェット、飛行試験機の登録4機抹消

 Aviation Wireが今度は登録抹消となった飛行試験機について記事にしました。記事の冒頭は「三菱重工は4月26日、開発を中止したジェット旅客機「三菱スペースジェット(旧MRJ)」の飛行試験機について、米国で試験を行っていた4機の解体を完了したことを明らかにした。愛知県小牧で保管している機体については、「まだ決まっておらず、検討中」としている」。

 やはりモーゼスレイクの4機はすでに解体済で、小牧に残っている機体が今後どうなるのかということのようです。私は1機はあいち航空ミュージアムに展示すると信じているので、それがANAカラーの飛べない5号機(JA25MJ)なのか、スペースジェットになったあとで製造された10号機(JA26MJ)なのかのどちらかと思っています。

 5号機はANAが承諾しないかもしれませんし、地上試験中にあちこちに穴を開けていたので、すでに五体満足ではない可能性もあります。途中で名称を三菱リージョナルジェット(MRJ)から三菱スペースジェットに変更したことですし、やはり10号機(JA26MJ)が順当なところでしょうか。




★スペースジェット全機の登録抹消 国交省、初号機含む4機

  

共同通信:スペースジェット全機の登録抹消 国交省、初号機含む4機

Aviation Wire:三菱航空機が社名変更 MSJ資産管理株式会社、サイトは閉鎖

CBCニュース:三菱航空機の会社名消えた ホームページも閉鎖 国産初のジェット旅客機「スペースジェット」開発断念で…新社名は「MSJ資産管理株式会社」

月刊エアライン編集部:MRJ/スペースジェットの開発中止以降、その先行きが注目されてきた三菱航空機(株)。本日4月25日をもって「MSJ資産管理株式会社」へと改称し、その社名が消滅しました。

Aviation Wire:ANAが契約解除 どうなるスペースジェット跡目争い

 共同通信が「スペースジェット全機の登録抹消 国交省、初号機含む4機」という記事を掲載。ほかのメディアは三菱航空機の社名変更を大きく伝えていましたが、共同通信だけは 「国土交通省が25日、三菱重工が事業撤退を決めた国産初のジェット旅客機スペースジェット(旧MRJ)4機の登録を抹消したと明らかにした。3月6日付。初号機を含み、これで全機が抹消された」と伝えていました。

 そして三菱重工が25日、「三菱航空機株式会社」から「MSJ資産管理株式会社」へ社名変更致したことを自社のHPで公開。これを受けてAviation Wireなどが一斉に記事を配信。残念なニュースですが、成り行きからして当然と言えるでしょう。月刊エアライン編集部も三菱重工のプレスリリースをリンクしてツイートしていました。

 Aviation Wireはもう1つ、「ANAが契約解除 どうなるスペースジェット跡目争い」という記事も掲載しており、吉川編集長の執念を感じずにはえられません。スペースジェットの跡目争いはエンブラエルのE2ジェットと、エアバスA220の一騎打ちでしょう。サイズ面ではE2-175がピッタリですが、エアバス社もきっと巻き返しに躍起でしょう。




★ANA、スペースジェットの契約解除 業績影響なし

  

Aviation Wire:ANA、スペースジェットの契約解除 業績影響なし

 Aviation Wireが「ANA、スペースジェットの契約解除 業績影響なし」というタイトルの記事を掲載。吉川編集長の三菱スペースジェットに対する執着心は凄まじいものがありますね。
 JALに続いてANAの確定発注も解除となったことで、三菱リージョナルジェット事業は完全に終息したと言えるのではないでしょうか。あと残る感心といえば、飛行試験機が保存されるかのみです。三菱重工さん、あいち航空ミュージアムが展示スペース空けて待っていますよ。




★“日の丸ジェット”の夢は幻に…三菱重工がスペースジェット開発から撤退 再開信じていた地元「言葉もない」

  

東海テレビ「NEWS ONE」:“日の丸ジェット”の夢は幻に…三菱重工がスペースジェット開発から撤退 再開信じていた地元「言葉もない」

 東海テレビの公式サイトで、ローカルニュース「NEWS ONE」が放送した「“日の丸ジェット”の夢は幻に…三菱重工がスペースジェット開発から撤退 再開信じていた地元「言葉もない」」を公開しました。

 私はこのテレビニュース放送を観ていないので、どういう背景でこの時期にこのニュースが放送されたのかわかりませんが、地元放送局が追っかけた材料を集約したよくできている内容と思いました。




★国家プロジェクトの「MRJ」が解体された…貴重な教訓の結晶なのに

  

【ニッポン放送・飯田浩司のそこまで言うか!】 国家プロジェクトの「MRJ」が解体された…貴重な教訓の結晶なのに 米国のリスナーから届いた衝撃写真

 この写真はアメリカのフライトグローバルという航空系サイトが最初に配信したものでしたが、もしかしてその友人という「Wade J.Sackett氏」がフライトグローバルに持ち込んだものだったのでしょうか。




★「お飾りだった」元社長の独白 【未完の国産旅客機・第4部】

  

「お飾りだった」元社長の独白 【未完の国産旅客機・第4部】

 中日新聞が3月1日から3日間連続で掲載した【未完の国産旅客機・第4部】を、中日新聞Webが今になって掲載しました。以前も忘れた頃にWebニュースに掲載したことがありましたが、このタイムラグにどんな意味があるのでしょうか。




★開発断念した三菱の「日の丸ジェット」 経産省が検証会議立ち上げへ

  

朝日新聞:開発断念した三菱の「日の丸ジェット」 経産省が検証会議立ち上げへ

 三菱重工が開発を断念した国産初のジェット旅客機「スペースジェット」について、経済産業省は検証のための会議を立ち上げる方針を固めた。外部の有識者を交え、同社や政府からヒアリングをする。巨額の税金を投入しており、航空機産業に再挑戦する上でも、検証が不可欠と判断した。

 検証では、商業飛行に必要な「型式証明」(TC)取得のための体制や、外国企業との連携などが主な焦点となる見通しだ。同省幹部は「国民に期待された計画で、しっかり振り返らなければならない」と話す。半年ほどかけて報告書をまとめる。

 まあ、当然でしょうね。




★超レアな旧MRJのフェリーフライト時のスナップ写真

  

今はなき「FTV-3(JA23MJ}」のフェリーフライト写真

PHNL(ホノルル国際空港)に駐機中の「FTV-2(JA22MJ)」

こんな写真見ちゃったから思わず涙が出てきてしまいました

 「ひろ@JA26MJさん」が6年前の「FTV-3(JA23MJ)」のフェリーフライト時のスナップ写真をツイートしてくれました。プロフィールを拝見すると、すでに現役を引退されてはいるものの、元三菱航空機の方であると思われます。年齢もおそらく私とあまり離れていないと想像しています。今後もテストフライトなどの秘蔵写真をぜひツイートしていただけないでしょうか。よろしくお願いします。

 過去のツイートを拝見したところ、「FTV-2(JA22MJ)」のフェリーフライト時のスナップ写真も投稿さてれており、今までなぜ気づけなかったのだろうと反省しきりです。今回のツイートにはIsaac Alexanderさんがモーゼスレイク・グラントカウンティ空港に着陸する際の動画ツイートでコメントを寄せてくれました。




★開発頓挫のスペースジェット試験機が解体、失敗の教訓を生かすためにも保存を

  

開発頓挫のスペースジェット試験機が解体、失敗の教訓を生かすためにも保存を
残るは2機、国家プロジェクトの記録を残す責任もあるはずだ

日本経済新聞:三菱ジェット撤退、中小に打撃 受注消滅で補償なしも

 元JALのグレートキャプテンで航空評論家の「杉江 弘」さんのスペースジェット糾弾投稿第4弾。今回のタイトルは「開発頓挫のスペースジェット試験機が解体、失敗の教訓を生かすためにも保存を 残るは2機、国家プロジェクトの記録を残す責任もあるはずだ」。さすが元JALのグレートキャプテンで航空評論家の杉江弘さんのすばらしい投稿です。

 2月7日に三菱重工業が正式に開発中止を発表した小型ジェット旅客機「三菱スペースジェット(旧MRJ)」。なぜ開発に失敗したのか、当コラムでも取り上げてきたが、試験機が米国で解体されたとの話が伝わってきた。多額の補助金を受け、自国開発のジェット旅客機という「国民の夢」を背負ってきたプロジェクトの挫折を将来に生かすためにも、残りの試験機を保存すべきではないのか。

 国、三菱重工のほかに宇宙航空研究開発機構(JAXA)の応援も得て進められてきた一大国家的プロジェクトである。将来、国を挙げて再び日の丸ジェットに挑戦するならば、機体を国の責任で保存し、今後の研究材料にすべきではなかろうか。

 4機の試験機のうち最低でも1機は保存し、コクピットの内部はもちろん、燃費の良さを売り物にしていた米プラット&ホイットニー(P&W)社製のギヤードファンエンジンも手にとれるようにして、関心のある研究者やメディアに公開することが必要と思うがいかがであろうか?

 写真や映像だけでなく実物でスペースジェットを残し、機体、エンジンなど全てを公開して、そこから何らかの教訓を得られるように国民全体の共有財産にするべきであろう。「国家プロジェクト」である以上、必要な情報は開示し、記録は残すのが関係者の責任のはずだ。

 日本経済新聞にも「三菱ジェット撤退、中小に打撃 受注消滅で補償なしも」という記事がありました。日経Webからだと無料会員では月に1つしか記事を読めなくなりましたが、スマホのGoogleニュースからだといくつでも閲覧できるようです。




★1兆円を投入した「日の丸ジェット」開発中止。三菱重工が取り組むべき“次の一手”とは

  

日刊SPA!「1兆円を投入した『日の丸ジェット』開発中止。三菱重工が取り組むべき“次の一手”とは」

 日刊SPA!が「1兆円を投入した「日の丸ジェット」開発中止。三菱重工が取り組むべき“次の一手”とは」という記事を配信。ちょっと興味が湧いたので読んでみました。

 2008年に三菱航空機が設立されて15年、三菱重工は苦渋の決断を下した。この期間で約500億円とも言われる公金を含む累計1兆円の巨費を投じた国や三菱重工を批判するメディアも多い。しかし、機体を5機製造し、アメリカでの飛行試験を続けたことを評価しつつ、製品にできなかった理由を探ると前向きな道も見えてきた。・・どういうこと?

 今後、MSJの製造が再開されることはない。しかし、三菱重工にはMHIRJという会社がある。開発中止の説明書の解説でも触れた2020年6月にボンバルディア航空機のCRJ事業を買収してできた会社だ。カナダ・モントリオールに本社があり、CEOに日本人の山本博章氏を置いている。

 CRJ事業を引き継いだだけとはいえ、125社のエアラインで1,300機を超える機体は飛んでいる。50人乗りのCRJ550から700、900型に加え、最大104人乗りのCRJ1000型機まで4つのラインアップがある。これは三菱重工の資産なのだ。これを活かさない手はない。製造ラインを再開し、既存機を母体に新CRJを開発すればいいのだ。MSJ開発中止の説明書にも今後の取り組みとして「CRJ事業での完成機事業への取り組み」とはっきり明示されている。これを維持・管理・発展させていくことは立派な完成機事業となる。

 純粋な国産機ではないものの、CRJ900は90席クラスの機体でまさにMSJのモデルM90であり、新規開発するにしてもテストフライト時間はエアバスを例に取れば既存機の6割の時間で済む。そろそろCRJと呼ぶのは止めてMHIRJや、それこそMRJと呼んでも差し支えないと思う。それこそ日加共同事業になるのではないか。

 現在、国内でCRJの保有状況は、IBEXエアラインズがCRJ700の10機のみとなった。同社のホームページにはいまだにカナダのボンバルディア社製の航空機と説明されている。「弊社は技術力の高い三菱重工の航空機を使用しています」と言える土壌を作っていかなくてはならない。

 なるほど、そういうことですか。着眼点は悪くないですが、三菱重工は非常にプライドの高い集団ですので、それを是とするかと考えると答えは「NO」ではないかと思います。




★わざわざ日本からスクラップになった21MJを見に行かれたのですか?

  

完全にスクラップになった1号機

 じんべいさんという方が、わざわざモーゼスレイクまでJA21MJのスクラップを見に行かれたようです。じんべいさんの過去のツイートを見ると、日本のものが目立ちます。どこにお住いの方なのかわかりませんが、もしもわざわざ日本から駆け付けたとしたらすごい方です。この方、エンジニアさんのようですので、おそらくワシントン州に海外赴任されているのではと推測します。それでもモーゼスレイクは遠いですけどね。

 このスクラップ写真を見て思ったのは、アメリカではリサイクルしないのだろうかということ。旧MRJはカーボン素材の部分は少なく、多くはアルミ合金でできているはずなので、かなりの部材がリサイクルできるのではないかと思えます。それとも分解されては困るので、完全に潰してしまったということなのでしょうか?




★国産ジェット「MSJ」試験初号機、米国で解体…研究用に残す機体も検討へ

  

読売新聞:国産ジェット「MSJ」試験初号機、米国で解体…研究用に残す機体も検討へ

三菱航空機のSpaceJetプロトタイプリージョナルジェットの1つが、ワシントン州のモーゼスレイクで解体されました。(Google翻訳のまま)

中日新聞3/10朝刊。やはりモーゼスレイクで保管中の旧MRJ飛行試験機はすべて現地で解体されるようです。

Aviation Wireの記事ですが今回は珍しく配信が遅かったです。

 読売新聞記事引用:三菱重工が撤退を表明した国産初のジェット旅客機「三菱スペースジェット(MSJ)」の試験初号機について、保管する米ワシントン州で解体作業に入ったことが分かった。2015年11月の初飛行に使用され、その後は米国での飛行試験に用いられていた。

 これまで米国に運んだ試験機計4機のうち1機を解体しており、解体は2機目となる。同社広報部は、残る機体について「解体せず研究用に残すことも含め、検討する」としている。同社は2月上旬、MSJの開発中止を決定。事業会社「三菱航空機」の清算に向けた協議を進めるとしていた。

 この読売新聞の記事によると、三菱重工広報部は「残る機体について解体せず研究用に残すことも含め検討する」とコメントしているようです。これがリップサービスではなく、実際に検討されることに期待するしかありません。

 では、もし残すとすると何号機になるのかということになりますが、アメリカに残っている4号機(JA24MJ)についても、すでにかなりの時間飛行試験していて、機体の劣化もあることでしょう。3号機が最初に解体されたのも、それを理由にしていましたのでね。加えてアメリカから日本へのフェリーフライトの許可が出るのも難しいのではと言われています。

 残るは日本にある飛べない5号機(JA25MJ)とスペースジェットへ設計変更されたのちに組み立てられた10号機(JA26MJ)の2機が完成機で、白塗装で目撃され試験に使用されることがなかった7号機(JA27MJ)と11号機(JQ7002)の2機の計4機。

 一般論で考えると、この中で唯一飛んだ10号機が有力なのではないかと推測されますね。ただし、三菱航空機はすでに飛行試験機のエンジンをすべてPW社に返却してしまっているようなので、ライセンス生産した国産エンジンをぶら下げて保存するのでしょうか。




★悲報 JA21MJもついにスクラップ

  

更新: 今日、モーゼスレイクのグラント郡国際空港で、最初の三菱航空機リージョナル ジェット / スペースジェット JA21MJ が廃棄されています。ウェイド・サケットは今朝、引き裂かれている航空機を撮影しました。 (Google翻訳のまま)

フライトグローバル:モーゼスレイクでスクラップになったスペースジェット試験機

4機全機が最後に揃ったのは、2020年5月末、モーゼスレイクのエアロテック格納庫の外でした。

 アメリカ在住のIsaac Alexanderさんが、モーゼスレイク・グラント群国際空港で今日、JA21MJがスクラップにされたのとのツイート。滑走路の磁方位が「36」となっているし、周囲になにもない広大な場所にあるので、ここは少なくとも「モーゼスレイク・グラントカウンティ空港」ではないようです。ここまでどうやって移動させたのかも気になります。

 せめて1号機を日本に戻して、願わくばあいち航空ミュージアムでの常設展示と思っていましたが、非常に残念です。この分だと残る24MJもスクラップにされるのは時間の問題と思われます。




★スクラッパーに向かうSpaceJet JA22MJ

  

Isaac Alexanderさんからダイレクトメッセージが届きました。

ツイートを開いて見たところ「三菱航空機 スクラッパーに向かうSpaceJet JA22MJ」。

 昨日、アメリカ在住のIsaac Alexanderさんからダイレクトメッセージが届きました。クリックしてみると「@三菱航空機 スクラッパーに向かうSpaceJet JA22MJ」とツイートされていました。

 ついに2号機もスクラップですか。モーゼスレイクまでグアム〜マジュロ〜ハワイとフェリーして行ったことが思い出されます。ハワイでトラブル起こして一度引き返したんでしたっけね。これでモーゼスレイクに残っているのは1号機である21MJと4号機の24MJの2機になりました。せめて1号機だけでも日本に戻してもらえないかと願うばかりです。




★MJの本質 第4部3 かじ取り不在 最後まで そしてJALには80億円の補償金

  

中日新聞3/3朝刊9面 かじ取り不在 最後まで

Aviation Wire:JAL、スペースジェット補償金80億円 通期影響なし

ニュースイッチ:JALに補償金80億円、三菱重工が負うMSJ開発中止の代償

 中日新聞が3月1日から掲載している「MJの本質 第4部」の3回目。今日も川井元三菱航空機社長のぼやき記事でした。わずか在任2年3か月の「お飾り社長」では、現実的にやれることはほとんどなかったと思いますけどね。そしていよいよスペースジェットのキャンセル補償金が支払われ始めたようです。

 JALは導入予定航空機に関する補償金として80億円を受領すると発表した。2023年3月期に計上する。航空機名は非公表だが、三菱スペースジェットとみられる。三菱重工はスペースジェットの補償金を過去の会計処理で織り込み済みのため、業績には影響しないとしている。

 JALで80億円だと、ローンチカスタマーで延々と待たされたANAにはいくら払うのでしょう?




★MJの本質 第4部2 明かせなかった心の内

  

中日新聞3/2朝刊9面 明かせなかった心の内

 中日新聞が3月1日から掲載している「MJの本質 第4部」の2回目。今日も川井元三菱航空機社長の曝露記事的な内容でした。曝露といよりもぼやきと言ったほうがいいかもしれません。三菱航空機に限ったことではありませんが、大手企業の子会社の社長というのは、親会社や系列会社からの外様が多く、いわゆる「お飾り社長」であったことが本人の証言からも明らかになりました。

 よく三菱スペースジェットと比較されるのがホンダジェットですが、ホンダジェットはそもそも日本製ではありませんし、元本田技研工業の本田宗一郎が藤野社長に、「何があってもやり遂げろ」と檄を飛ばしたことからもわかるように、航空機開発にはカリスマ社長が必要なんですよね。お飾り社長による「ごっこ」では、そりゃうまくいくはずもないでしょう。




★MJの本質 第4部1 「お飾りだった」元社長の独白

  

中日新聞3/1朝刊1面 「お飾りだった」元社長の独白

中日新聞3/1朝刊11面 「明治維新」起こさねば

 今朝、中日新聞を広げて驚いてしまいました。それはすでに開発中止を発表してしまった三菱スペースジェットの回顧録「MJの本質」が掲載されていたからです。今回は川井元三菱航空機社長が主役で、どちらかというと曝露記事のような内容。すでに三菱重工とは無縁なのでしょうが、元身内のそれも元社長がこういうことを曝露してしまっていいのだろうかと思いながら読みました。




★三菱航空機、丹羽社長が退任 23年3月31日、4月1日付人事

  

Aviation Wire:三菱航空機、丹羽社長が退任 23年3月31日、4月1日付人事

東京経済オンライン:三菱重工「国産ジェット失敗」で抱える本当の危機 15年で1兆円の投資が水の泡、教訓生かせるか

 Aviation Wireはじめ複数のマスメディアが三菱航空機の社長交代人事を掲載。その中からAviation Wireをリンクさせていただきます。

 三菱重工の子会社で「三菱スペースジェット(旧MRJ)」を開発していた三菱航空機は2月21日、4月1日付の新社長人事を発表した。丹羽興社長が3月31日付で退任し、コーポレート室長の桝谷啓介氏が社長に就任する。

 三菱航空機が社長交代を発表しましたが、会社を清算するだけの社長ですから誰でもいいとも言えます。

 東洋経済オンラインの「三菱重工『国産ジェット失敗』で抱える本当の危機 15年で1兆円の投資が水の泡、教訓生かせるか」は、先回はなかなかいい記事を掲載していた東洋経済オンラインなのに、今回の記事はどうなんでしょうかね。

 「技術力が足りなかったということではない。技術がなければ試験飛行はできなかった」。泉澤社長は会見でこう発言し、開発陣をかばった。前出の関係者は「結局、主翼などの部品を高い精度で作る技術は持っていても、それらをまとめ上げる力がなかった」と、振り返る。15年の長きにわたり、独り相撲を繰り広げたに過ぎなかった。

 本当にそうでしょうか?




★開発中止の MSJ、残存機はどうなる? 挑戦は“なかったこと”にされるのか 試される三菱の度量

  

乗りものニュース:開発中止の MSJ、残存機はどうなる? 挑戦は“なかったこと”にされるのか 試される三菱の度量

 乗りものニュースが「開発中止の MSJ、残存機はどうなる? 挑戦は“なかったこと”にされるのか 試される三菱の度量」という記事を掲載。三菱スペースジェットの開発終了が正式発表された。ここで注目したいのポイントのひとつは、残された機体がどうなるのかということ。初の国産ジェット旅客機としてデビューする予定だったものの、実用化されず終わったMSJ。筆者は残存機たちを「失敗の教訓」として公開展示し、将来航空界を目指す若手に見てもらい、開発の厳しさなどを実感してもらう役目を持たせることが大切ではないかと考えている。

 MSJは国土交通省の登録記号を見ると、JA21MJからJA26MJまで、地上試験用の1機を含めて6機が実際に造られた。このうち米国へ4機が飛び飛行試験を続け、開発がいったん「立ち止まった」あと、2022年3月に米国内で保管されていたJA23MJ(3号機)が登録を抹消され解体されている。このため、日本国内には地上試験用を含めて2機が保管されていることになる。残されたMSJが今後、どのように扱われるのかについては、まだ公式に発表はない。動向に注目したいのは国内に残る2機。MSJの実機を恒久的に公開展示すれば、後学にとってこのうえない教材になるだろう。

 MSJの最終組立工場内には2017年にミュージアムが開館し、実機の製造作業を見学でき、胴体などの実物大模型も展示されていたが、現在は臨時休館中。MSJの公開展示は三菱重工にとっては大変気の重い話であろう。しかし、「失敗の教訓」を正直に見せることは、長い目で見れば企業としての“度量”を示すことになる。

 三菱重工は過去に同じように教訓として実機を残している。国内開発したものの商業的に失敗したMH2000ヘリコプター。現在この実機はあいち航空ミュージアムで展示されている。官民挙げてのプロジェクトであったMSJは、経済産業省から500億円の支援を受けていた。公費を使った結果を国民へ公開すると考え合わせれば、国内に残った機体の展示は必要と筆者は考えている。

 いい記事ですね。激しく賛同します。ぜひ1機でいいのであいち航空ミュージアムで実機展示してほしいです。それが迷惑を掛けた関係者への罪滅ぼしにもつながるのではないでしょうか。




★MSJ開発中止の衝撃 代替の飛行機どうなる? 小型ジェット旅客機世界市場の行方とは

  

メルクマール:MSJ開発中止の衝撃 代替の飛行機どうなる? 小型ジェット旅客機世界市場の行方とは

 メルクマールが「MSJ開発中止の衝撃 代替の飛行機どうなる? 小型ジェット旅客機世界市場の行方とは」という記事を掲載。最初見出しを見た時、「またか」と思ったのですが、旅行ジャーナリストでカメラマンの「シカマアキ」さんの投稿だったので取り上げることにしました。

 スペースジェット開発中止でキャンセルになった受注済み約270機の納入先として決まっていた航空会社。日本国内ではANAが2008年に25機(確定15機、オプション10機)の購入を発表し、準備でき次第、ローンチカスタマーとして初号機を受け取るはずだった。一方、JALも2015年に32機を確定発注していた。

 国内外の航空業界は2020年春からの新型コロナウイルス禍で、大きな打撃を受けた。その間、航空需要が減って大型機などを売却する航空会社が続出。その一方、小型ジェット機やプロペラ機などは、ほぼフル稼働の状況となった。座席数が少なく、近距離のみの移動というニーズを満たすのに、このサイズの飛行機は最適である。コロナ後に大型機での運航も再開してはいるものの、小型機のニーズは減っていない。

 日本国内ではJAL系のジェイエアがエンブラエルのE170とE190、FDAがE170とE175を所有。IBEXはCRJ700NGを10機所有して運航中。ANA系のANAウイングスはDHC8-Q400に加え、ボーイング社の737-800で運航している。JALの場合、現在のエンブラエルはまだ年式も比較的新しい。しかも、2022年5月に発表した中期経営計画での「機材戦略」のなかにはMSJはなく、E190/E170が入っていた。当初はMSJ導入までのつなぎという目的だったが、この発表時点でそのまま運用し続けることの裏付けとなった。

  一方、ANAにとって、すでに退役済みの737-500の後継機がなくなったダメージは決して小さくない。ANAでは、MSJに関して2025年からの導入を目指していた。2023年2月15日、ANAホールディングスが2023年〜25年度の中期経営戦略を発表した際、同社の芝田浩二社長は、現在ある機材で2025年までカバーし、代わりとなる航空機の選定時期も来ていると、MSJの開発中止に関して言及したことも話題となった。ANAではMSJに代わる70〜90席程度のリージョナルジェットの選定と導入が急務なのは間違いない。

 ANA国内線の座席数は、737-800が166席、DHC8-Q400が74席。傘下のANAウイングスが競合するジェイエアのエンブラエルが76席/95席であることを考えると、同程度の座席数かつジェット機が理想的だろう。いずれにせよ、今後も堅調が見込まれるリージョナルジェットとして、ANAがどの機材を選定するかに注目が集まる。

 シカマアキさんの投稿を引用させていただきましたが、ANAがどの機種を選定するかはこの最後の部分で確定してしまうと思いますね。76席から95席のリージョナルジェットは事実上1択だからです。




★三菱の国産ジェット機が撤退に追い込まれた必然 政府も含めたビジネス感覚、当事者意識の欠如

  

東洋経済オンライン:三菱の国産ジェット機が撤退に追い込まれた必然 政府も含めたビジネス感覚、当事者意識の欠如

 東洋経済オンラインが、「三菱の国産ジェット機が撤退に追い込まれた必然 政府も含めたビジネス感覚、当事者意識の欠如」という記事を掲載。当初は16日の更新でしれっとペッタンするつもりでしたが、読み直してみたところちょっと興味が湧いたので、日を改めてご紹介することにしました。

 筆者はパリやファンボローといった航空ショーの現場も含めて関係者に少なからず取材していたが、撤退に至った本当の原因は型式証明取得自体ではなく、三菱重工と日本政府に当事者意識と能力が欠けていたことだと指摘したい。航空ショーへの出展でも三菱の「世間知らずぶり」が目立った。胴体モックアップにしても、普通のメーカーならばパビリオン内に展示し、誰でも見られるようにするのだが、三菱重工はシャーレー内部に作って、招待されないと入れないシステムだった。しかもプレスに対しても時間を厳しく制限していた。

 筆者には1990年代に航空ショーや軍事見本市に参入してきたソ連崩壊後のロシアの企業とダブって見えた。当時のロシアの企業は、カタログは粗末な更紙にロシア語で書かれたものばかりで、英語の喋れるスタッフもおらず、担当者はウオッカを飲んで赤い顔をしていた。とても商売をやっているとは言えない状態だった。精神論かもしれないが、自分たちがこのビジネスの新参者であり、どうしたら顧客に物を売れるか、謙虚に市場から学ぼうという態度が見受けられなかった。

 三菱重工だけではなく、国や経産省、防衛省といった関連省庁の責任も重い。わが国では機体メーカーとして三菱重工、川崎重工、スバル、新明和工業の4社があり、エンジンメーカーとしてはIHI、三菱重工、川崎重工の3社が存在するが、いずれも世界的にみれば弱小メーカーであり、自ら世界の軍民市場で戦った経験はほとんどなく、防衛省向けの売り上げに依存して国内の競争ですらロクにしてこなかった。

 MRJに関して防衛省は全くコミットしてこなかった。仮に途中からでも例えば政府専用機、海自のP−3Cを流用した電子戦機などの後継、空自がC-2の機体を流用した電子戦機RC-2などの機体にMRJを採用するなどして、防衛費でMRJを支えるつもりがあればMRJの延命は可能だっただろう。これらだけでも10機以上の需要はあったはずだ。

 自衛隊機であれば型式証明を取る必要はない。型式証明が取れるまでの期間、自衛隊機として生産を続ければ三菱航空機はキャッシュが入り、工場も遊ばせずに済む。自衛隊が採用したという事実もセールスに利用できる。だがMRJの開発が暗礁に乗り上げても挙国一致体制は取れずに、自衛隊がMRJを採用することもなかった。

 なるほど、と思えることが多々あります。確かに防衛省がコミットすれば、少なくとも10機程度は空を飛ぶことはできたことは確かでしょう。しかし、商業ベースに乗せるにはその何百倍もの機体を売らなければならず、それもよもやま話と言わざるを得ないですね。三菱重工が撤退を決めた最後の一撃は、型式証明を取得できる目途が立たないことだと私は思っています。




★ANA、三菱スペースジェットの代替機は「2025年度以降に必要。機材選定の時期がきた」

  

トラベルWatch:ANA、三菱スペースジェットの代替機は「2025年度以降に必要。機材選定の時期がきた」

JBpress:三菱スペースジェット失敗の理由、ホンダジェットとの比較を詳解

産経新聞:国産旅客機の断念 新事業への挑戦続けよう

 毎日毎日、ネット上に三菱スペースジェット撤退記事が掲載され続けています。ようやく大手新聞社などによる三菱重工たたきが沈静化し、そろそろ今後について考える記事が増えてきました。その中でトラベルWatchの「ANA、三菱スペースジェットの代替機は『2025年度以降に必要。機材選定の時期がきた』」が、特に気になりましたのでご紹介します。

 ANAホールディングスは2月15日、2023〜2025年度のグループ中期経営計画について説明した。そのなかで、2月7日に開発中止が正式発表された三菱航空機の「三菱スペースジェット」について言及。

 会見のなかでANAHD代表取締役社長の芝田浩二氏は、当初の2008年の納入からスケジュールが遅れるなか、スペースジェットを運用できない部分は別の機材でカバーしてきたが、2025年度以降については代替の機材の確保が必要なので、機材の選定が必要な時期になっている、と説明した。また、開発の中止は「非常に残念」としつつ、「開発にあたった皆さんに敬意を表したい」と述べた。

 さて、ANAホールデングスのANAウイングスがスペースジェットの代わりに次期機材に選ぶ機体はいったい何なんでしょう?提携会社がCRJ使っていますが、すでにボンバルディアが会社を清算してしまっているし、エアバスA220では大きすぎる路線もあるでしょう。

 すると残るはジェイエアやFDAが使用しているエンブラエルが、次期リージョナルジェットとして開発したE2ジェットでしょうか。ただ、エンブラエルも84人乗りのE2-175の開発を中断しているので、この時期に選定するとなるとスペースジェットよりも定員の多いE2-190か、それとも現行機種のERJ175という可能性もあるのでしょうか?




★三菱重工のMSJ撤退、「失敗の要因」と「経営への影響」

  

ニュースイッチ:三菱重工のMSJ撤退、「失敗の要因」と「経営への影響」か

乗りものニュース:三菱MRJまだいます! 三菱の技術館に夢の残り香 初飛行に沸いた頃からどう変化?

 ニュースイッチが三菱重工のMSJ撤退、「失敗の要因」と「経営への影響」という記事を掲載。

 三菱重工が小型ジェット旅客機「三菱スペースジェット」事業からの撤退を決めた。「失敗の理由」「成果・経営への影響」「国内航空機産業への影響」についてまとめたという宣伝用ツイートでわかるように、いわゆる「総括」記事となっています。そして新聞各紙の批判的社説よりは内容に意味があると思います。

 最後に、国産旅客機は二度と生産できないのだろうか。三菱重工はMSJから撤退するが、夢を諦めきれないように思える。説明資料には今後の取り組みの一つとして、「完成機を見据えた次世代技術の検討」と記した。

 この意味について、泉沢社長は「一つのプロジェクトを中止した段階で、次はどうだと容易に話せるレベルではない」と述べるにとどめた。MSJの次があるかは、三菱重工が苦い経験を血肉にした上で市場性などの条件が整うか次第だ。ハードルは非常に高い。

 そうでしょうね。そうおいそれとは再チャレンジしますとは言えないでしょう。

 もう1つ、乗りものニュースが「三菱MRJまだいます! 三菱の技術館に夢の残り香 初飛行に沸いた頃からどう変化?」という、ちょっと興味を引く記事を掲載していました。モップアップ展示はもとより、実機展示に期待したいですよね。




★MSJ開発中止、導入待ち続けたANA&JALはどうする?

  

のりものニュース:MSJ開発中止、導入待ち続けたANA&JALはどうする? 日の丸ジェット挫折の代替は難しい判断か

幻の国産旅客機となってしまった三菱スペースジェット。月刊エアライン編集部では2015年11月の初飛行直後に、別冊「三菱航空機MRJ」を出版しました。残念ながら紙の本はすでに絶版ですが、電子版はお求めいただけます。Amazon(Kindle)税込489円。

Aviation Wire:羽田で最新鋭E195-E2披露 特集・リージョナル最大手エンブラエル、スペースジェット撤退後の一手

 のりものニュースが「MSJ開発中止、導入待ち続けたANA&JALはどうする? 日の丸ジェット挫折の代替は難しい判断か」という、ちょっと気になるタイトルの記事を掲載したので読んでみました。

 この機の「ローンチカスタマー」のANAグループだけでなく、JALグループへの納入も待たれていました。三菱重工の泉澤清次社長は今後について「引き続き丁寧にお話を進めていきます」としていますが、2社はそれぞれ、次世代旅客機の納入計画が破綻してしまったのです。この穴埋めには、どのような方法が考えられるのでしょうか。

 読んだ感想ですが、残念ながら新たな情報や考察はなく、ANAグループは元ボンバルディアのDHC8-Q400とボーイング737、JALはエンブラエルE170とE190の置き換えをどうするかを書いているだけでした。このうちJALグループのジェイエアについては、今あえてエンブラエルを更新する必要はなく、古くなったらE2ジェットにするだけですので、問題なのはANAグループということでしょう。でもDHC8-Q400は決して古くて今すぐに新機種に変更しなくてはいけないとも思えないので、別に両社とも大して困っていないのではないでしょうか。

 月刊エアライン編集部が別冊「三菱航空機MRJ」の電子版について紹介していました。しかし今さらこの本の電子版を購入する方はほとんどいないのではないでしょうかね。ちなみに私は紙の本、それも初版ををしっかり保存しています。Aviation Wireは相変わらず情報発信が早いですね。




★ANAとJALの機材計画にも大きな影響、どう落とし前をつけるのか

  

三菱重工の国産ジェット旅客機が開発中止、政治の責任を忘れてもらっては困る
ANAとJALの機材計画にも大きな影響、どう落とし前をつけるのか

 元JALのグレートキャプテンで航空評論家の「杉江 弘」さんのスペースジェット糾弾投稿第3弾。今回のタイトルは「三菱重工の国産ジェット旅客機が開発中止、政治の責任を忘れてもらっては困る ANAとJALの機材計画にも大きな影響、どう落とし前をつけるのか」。今回も杉江元CAPの持論をもとに、ANAとJALが国に振り回された経緯とその後を書き綴られたものです。以下はその中から特に印象に残った部分を抜き出したものです。

 今回の結果に対する責任は三菱重工と国の双方にあるが、事業への支援に約500億円の公的資金が使われていること、そして、ANAとJALの事業計画と機材計画に大きく影響を与え、いまだに混迷状態にさせている責任があることを忘れてはならない。

 ANAは最近になってLCCのピーチ・アビエーションをグループに入れ、連携を強化することで短距離ローカル線を強化する戦略を描いている。しかし、ピーチが保有する「エアバスA320」の座席数は188で、最低4名のCAが必要だ。JALのエンブラエルE170の座席数76、2名のCAと比べるとスケールが大きすぎる。やはり本当はリージョナルジェットが欲しいところであろう。

 JALの事業計画では、将来エンブラエル全機を退役させてスペースジェットに置き換えることが書かれている。現在運航しているのはE170が18機、E190が14機であるが、計画ではさらに増強しつつも、それはあくまでつなぎであって、将来はスペースジェットに置き換えていくという内容である。しかし素人が考えても、せっかくエンブラエルで成功し、燃費の良い同社のE2ジェットも導入できる環境下で、それをスペースジェットに切り替えていく必要はどこにもなかった。

 私に言わせれば、エンブラエルを全機スペースジェットに置き換えるなどという機材計画は、そのセンスを疑わざるを得ないものであった。経営陣が本気でそれがベストの選択と思ってきたのか、あるいは経営破綻後に国から支援を受けた見返りとして忖度したのかはわからないが、多大なコストをかけて再び経営危機を招いたら一体どうするつもりだったのか。

 そう考えると、スペースジェットの開発失敗は、結果的にJALにとって好都合の事態ということになる。将来のリージョナルジェットもエンブラエルで継続するよう事業計画、機材計画の修正を行うことが必要であろう。とりわけ、経済産業省と国土交通省は所管官庁であるのに、官民一体の事業と言いながら事実上、開発を三菱重工に丸投げして耐空証明を取得できるような援助も指導もできなかった。その責任は重大である。

 今後、投入した500億円という公費をどうするのか、いまだに何の説明もない。そして、自民党を中心とする政府与党もそうであるが、政権の座にあったときに開発を推進してきた民主党を引き継いだ立憲民主党も、このスペースジェットの問題で国会で何の質問も見解も出していない。政治の責任を忘れてもらっては困るのである。
  

中日新聞2月10日朝刊社説 国産旅客機撤退 成功の「母」にしてこそ

中日新聞2月10日朝刊3面 航空機関連 売上高2年連続減 SJ撤退、事業継続困難も

 今朝の中日新聞朝刊社説にスペースジェット撤退が掲載されました。社説ですので批判的な文面は控えられ、今後にいかにこの経験を生かすかということに着眼していますが、この社説を書いた中日新聞の論説委員は、三菱重工の中ですでに過去のものになっていることを危惧しているようです。そして「既に重工社内ではSJの話題は立ち消え、防衛費増額で追い風が吹く次期戦闘機開発に「浮かれた雰囲気さえある」と軽く批判している点が光ります。

 今朝はもう1つ3面にも関連記事があったのですが、内容よりも編集が気になりました。1段目が「む。」の1文字で終わり、3段目が「た。」の1文字から始まっていて、いかにも見栄えが悪いです。昔、学校でこのような文章の書き方をすると、先生に注意されたものですが、最近の新聞はPCで編集しているから、こういうことは気にしないのですね。




★スペースジェット開発中止で問われる267機の責任 特集・機体メーカーとしての三菱重工

  

Aviation Wire:スペースジェット開発中止で問われる267機の責任 特集・機体メーカーとしての三菱重工

 Aviation Wireが今日は開発中止でキャンセルとなった267機に対する責任について掲載。吉川編集長の言わんとしていることは文末に集約されているようです。

 開発中止は代替機の確保や違約金で済む話でもない。ANAグループでスペースジェットを運航予定だったANAウイングスでは、スペースジェットがパイロット確保で重要な役割を果たしていた。しかし、6度目の延期が発表されたころには他社へ転職する人も出ており、金銭による補償だけで済む問題ではなくなっている。スペースジェットが就航していれば、営業面でも採用面でも有効活用できたはずだ。これはANAウイングスとジェイエアに共通するものだろう。

 三菱側がその重要性をどの程度理解しているかは、7日の泉澤社長の答えからは不透明なままだった。実際、泉澤社長のあいさつでは「開発中止の判断に至ったことは大変残念」との言葉はあったものの、記事冒頭の陳謝は私が質問して初めて出た言葉だったからだ。このタイミングで開発中止を決定したことについて、泉澤社長は「4月以降の新体制を考えると、あるタイミングできちっとした方が良いと考えた」と説明する。

 開発中止が正式決定した今、試験機の完成度を誇るだけでなく、機体メーカーとして航空会社などの顧客に寄り添う姿勢が必要ではないだろうか。顧客と真摯に向き合えるかは、わが国の航空機産業を今後発展させていく上でも重要な課題といえるだろう。




★スペースジェット試験機、3機は米国駐機中 解体か保存か

  

中日新聞2月8日朝刊1面「国産ジェット撤退 発表」

中日新聞2月8日朝刊3面「国産の夢「正直 甘かった」

中日新聞2月8日朝刊7面「凍結で終わっていた」

中日新聞2月8日朝刊25面「重要施策の一つ…大変残念」

Aviation Wire:スペースジェット試験機、3機は米国駐機中 解体か保存か

メルクマール:MSJはなぜ「開発中止」に追い込まれたのか? 本当に日本の技術を憂うなら、まず製造国として型式証明を承認せよ

テレビ愛知ニュース:スペースジェット撤退の要因は「技術不足と経験不足」 開発中止をスクープした編集長が指摘

 今朝の中日新聞朝刊はすごかった・・・。まさか1面はじめ4つも同時に記事を掲載するとは想像以上でした。おかげで朝の忙しい時間帯にスキャナでデータ取り込み、サムネイルと拡大画像を作成。何とかギリギリで遅刻せずに出勤できました。それが地元の中日新聞と言えるのかもしれません。

 Aviation Wireが間髪を入れずに「スペースジェット試験機、3機は米国駐機中 解体か保存か」という気になる飛行試験機の処遇記事を掲載しました。

 開発中止が決まった三菱重工業のジェット旅客機「三菱スペースジェット(旧MRJ)」。米国で試験を行っていた4機の飛行試験機のうち、3号機(登録記号JA23MJ)は解体済みだが、残り3機の処遇は決定していないという。飛行試験機を県営名古屋空港から米ワシントン州のモーゼスレイクまでフェリーする際は、米国で飛行試験を実施することを目的として、当局から臨時の飛行許可を得ていた。仮に機体を日本へ戻すことを検討する場合、これまでのように臨時の許可が下りるのかも検討材料になるようだ。

 飛行が認められない場合は、3号機と同様にモーゼスレイクで解体するなど米国内で対処することになる。フェリーフライトや機体の保存は費用がかかるため、最も安価なのは米国で解体することだ。機体を保存するとしても、誰が多額の費用を負担するのかといった問題がある。飛行試験が今後行われないことが確定した今、米国に残る飛行試験機の去就が注目される。

 まあ、普通に考えたら現地で解体ではないでしょうか。日本に戻す理由があるとすればそれはただ1つ。ミュージアムで保管するため。もし帰ってくるなら初飛行した21MJなのでしょうけど、三菱重工が愛知県に対してお詫びのしるしでそこまでサービスするかどうかでしょう。

 それに日本までの飛行許可が下りるとも思えず、わざわざ分解してアメリカから船積みして持って来なくても、三菱重工のMRJハンガー内には飛べない25MJとスペースジェットになった26MJがあります。ほかにも数機の組み立て済の機体があるので、私はアメリカに残されている3機は現地で解体される運命と思います。

 メルクマールの記事はこれで終わりでは金をドブに捨てたのと同じなので、MSJプロジェクトによって得た教訓や技術的な成果を「どのように次世代につなげていくか」だと言ってます。ごもっともなご意見です。




★三菱重工、スペースジェット開発中止を正式発表

  

三菱重工のプレスリリース クリックするとリリース文にある23ページが開きます。

中日新聞2月7日朝刊1面:スペースジェット開発中止

中日新聞:スペースジェット開発中止 「極めて遺憾」 愛知、大村知事

CBCニュース:国産初の「ジェット旅客機」計画に幕 「スペースジェット」開発中止で波紋が広がる

メーテレ:消えた「夢の翼」スペースジェット開発中止 三菱重工業「最新の技術と比べて競争力が低下」

メーテレ:【スペースジェット開発中止】MRJ初飛行映像をアーカイブから

Aviation Wire:三菱重工、スペースジェット開発中止を正式発表

日本経済新聞:三菱重工、国産ジェット旅客機撤退へ 開発会社も清算

日本経済新聞:三菱重工、YS-11以来の国産旅客機ならず 撤退でけじめ

日本経済新聞:三菱ジェット、たたまれた「翼」 曲折の15年

月刊エアライン編集部のツイート

 三菱重工は7日、国産ジェット旅客機の開発を中止すると発表した。事実上の撤退となる。半世紀ぶりとなる国産旅客機の開発の事業化を決めてから約15年。官民肝煎りの日の丸ジェット「三菱スペースジェット(MSJ、旧MRJ)」の構想は道半ばで頓挫した。受注した航空会社や補助金を出した国などステークホルダーが多いなか、これ以上決断を先送りする時間は三菱重工には残されていなかった。

 愛知県の大村秀章知事は7日の定例記者会見で「報道が事実だとすれば、極めて遺憾で、極めて残念」と話した。三菱重工から説明は受けていない、としている。愛知県は三菱重工が完成機を造る前提で、同県豊山町内の県営名古屋空港近くに、組立工場(約5万平方メートル)と塗装工場(約2万平方メートル)用の土地を提供。造成費用なども含め27億4000万円を負担している。

 大村知事は「完成機を造らないなら、違約金条項がある」として、今後、三菱側が用地で何をする計画があるのか、ただしていく意向を示した。航空機産業に連なる部品メーカーへの影響を懸念し「中小企業へは引き続き、県としてきめ細かな支援をしていく」と強調。県内には三菱重工以外に米ボーイング社などから受注している企業もあり、県として「引き続き航空機産業支援を進めていく」と述べた。

 さて昨日「開発を中止した事実はない」とコメントしたのは、単に正式に取締役会の決定がされてなかっただけということでした。泉澤社長は「本日の取締役会において(スペースジェットの)開発の中止を決定した。機体を納入できなかったことに対して、大変申し訳なく思っている」とコメント。相変わらず官僚よりも官僚らしいと揶揄される三菱重工だけのことはあります。

 いっぽうで怒りが収まらないのは愛知県の大村知事でしょう。4期目の知事選挙で当選したばかりで気分が良かったはずなのに、「完成機を造らないなら、違約金条項がある」とまで会見で言い述べたのですから、相当なお怒りぶりと推測します。今後三菱重工に待ち受けるのはこれらの違約金の支払いや契約してくれた航空会社への賠償など。国鉄清算事業団のようなスペースジェット開発中止に伴う清算をするための新会社が必要になるのではないでしょうか。

 そして月刊エアライン編集部がツイートしたように、たとえ1機だけでもいいので、飛行試験機をあいち航空ミュージアムで展示保管してもらいたいと願うばかりです。




★三菱重工、国産ジェット旅客機撤退へ 開発会社も清算

  

日本経済新聞:三菱重工、国産ジェット旅客機撤退へ 開発会社も清算

 三菱重工業が国産ジェット旅客機の事業から撤退する方針を固めたことが6日、分かった。2020年秋に「三菱スペースジェット(MSJ)」の開発を事実上凍結していたが、今後の事業成長を見通せないと判断した。開発子会社の三菱航空機(愛知県豊山町)も清算する方針。累計1兆円の開発費を投じながら納期を6度延期するなど空回りが続いた。新たな産業育成に向けた官民による国産旅客機の構想は頓挫した。

 7日にも発表する。20年秋に「いったん立ち止まる」(泉沢清次社長)と開発を事実上凍結した。その後も商業運航に必要な型式証明(TC)取得に向けた作業を続けてきた。新型コロナウイルス禍から航空市場が回復した後も、座席が100未満の小型ジェット旅客機「リージョナルジェット」市場の成長は見通せないと判断したとみられる。

 日経では明日7日に発表すると書いてますね。三菱重工の「開発を中止した事実はない」とのコメントはいったい何?相変わらず変な会社ですね。




★スペースジェット、開発中止 次期戦闘機に知見生かす

  

Aviation Wire:【独自】スペースジェット、開発中止 次期戦闘機に知見生かす

 Aviation Wireが【独自】「スペースジェット、開発中止 次期戦闘機に知見生かす」とのタイトルで、スペースジェット開発中止というニュースを掲載しました。以下はその冒頭。

 三菱重工業は、ジェット旅客機「三菱スペースジェット(旧MRJ)」の開発を中止する方針を固めた。近く正式発表する。同社は取材に対し「開発を中止した事実はない」とコメントした。国が機体の安全性を証明する「型式証明(TC)」を取得しても事業として成立しないため、これ以上の投資は難しいと判断した。スペースジェットの開発で得た知見は、日本と英国、イタリアの3カ国で共同開発する次期戦闘機などに生かす。

 三菱重工が本当のことをすぐには発表しないのは承知の事実ですので、Aviation Wireの取材に対し「開発を中止した事実はない」とコメントしたというのも納得。じゃあこの情報はどこから出たものなのでしょうか。しかしながら火のない所に煙は立たぬと言いますので、おそらく確定事実なのでしょう。そして近く正式発表するとまで書いてあるのですから、きっと三菱重工の泉澤社長の会見があるものと思われます。それまではとりあえず静観することにしましょう。




★延期繰り返し「売り」を失ったスペースジェット、なぜ国は支援できなったのか

  

延期繰り返し「売り」を失ったスペースジェット、なぜ国は支援できなったのか
【後編】頓挫した「日本の翼」、どう出直せばいいのか

 頓挫した「日本の翼」、どう出直せばいいのかの後編が公開されました。後編は杉江元CAPの実経験をもとにMRJ開発の問題点、もっと言えばMRJの欠点を述べられたもの。これは以前から杉江元CAPが何度も指摘していたことをあらためてまとめられたもので、杉江元CAPの一貫した見解でもあります。

 いくつか挙げると巡航速度がライバル機であるエンブラエルより遅いこと、自動着陸装置が装備されていないなどなどで、杉江元CAPはこれらを三菱航空機のテストパイロットが航空自衛隊の出身者で、ラインのパイロットを経験したことがないからだと指摘しています。そのため設計段階で民間航空の空の実態をよく理解していなかったと述べられています。これも杉江元CAPが以前から指摘されていたことで、実際にエンブラエルのCAPをされた方が言われるのですから説得力があります。

 そして6度の納入延期で最大の「売り」が消滅とのサブタイトルで、納期延期を繰り返しているうちに、GTFエンジンによる燃費のよさがライバル機にも導入されてしまい、アドバンテージを失ったことを挙げられています。これは当然の指摘ですね。

 これも杉江元CAPが何度も指摘されていますが、三菱航空機の生産拠点から数百メートルしか離れていない名古屋空港ビルには、当時杉江元CAPらが勤めていたジェイエアの本社もあったのです。それなのに三菱航空機は杉江元CAPを含め同僚のエンブラエル機を操縦するパイロットには誰ひとりとして接触しなかった。杉江元CAP自身、初の国産ジェットへの期待もあり、日本国民の1人として成功を願い、何か聞かれれば協力したいと考えていた。杉江元CAPはこのことが残念でならないのでしょう。

 最後に国土交通省の責任について述べられています。多額の公費を補助金として投入しながら事業全体を三菱重工に任せ、適切な協力や指導が行われなかったのはどうしたことか。特に耐空証明を得られるようにサポートすべきであったのに、できなかったことは残念だ。その原因が国土交通省の能力の問題だとしたら今後、職員のスキルをどう向上させていくのか。

 もしかしたら国産旅客機が大空に舞い上がる日は永遠に来ないかもしれません。




★「塩漬け」にされた国産ジェット旅客機開発、三菱重工に欠けていた視点とは

  

「塩漬け」にされた国産ジェット旅客機開発、三菱重工に欠けていた視点とは
【前編】頓挫した「日本の翼」、どう出直せばいいのか

 開発の中止を新型コロナのせいにしているが、事実関係を見ても、新型コロナの発生以前に納入延期を6度も繰り返しており、これでは正しい総括もできないだろう。

 三菱重工は補助金などで約500億円もの公費が投入されている手前、引くに引けない状況であると言われているが、それは逆ではないのか。血税が使われているからこそ一刻も早く失敗を認め、返済方法の協議に入るべきであろう。

 すごい辛口の記事と思ったら、元JALのグレートキャプテンで航空評論家の「杉江 弘」さんの投稿記事でした。普段から杉江元CAPの言っていることはほぼ全部当たっているし正論です。おまけに杉江元CAPは当初からMRJの開発方法に否定的だったので、塩漬け状態になったまま放置されているのを「何たるざまだ」との想いで見ているのでしょう。




★増やせテストパイロット〜スペースジェット携わった安村さんが初の民間スクール開校

  

中日新聞1月11日朝刊:「増やせテストパイロット」

 中日新聞1月11日朝刊に、元三菱航空機のチーフテストパイロットだった安村さんの近況を伝える記事がありました。安村さんは民間のテストパイロット養成スクール「ジャパンテストパイロットスクール」を開設、航空機産業の底上げを目指し、飛行試験の経験や知識を伝えていきたいとの意気込みを述べられたようです。

 テストパイロットとしての需要が日本国内にどのくらいあるのか疑問ですが、今後は空飛ぶクルマの開発が進むと操縦するテストパイロットが必要になるとの目論みと思われます。安村さんの経験と足跡が、後世に引き継がれることを祈っています。




★なぜ国産旅客機「MRJ」は失敗したのか

  

メルクマール:なぜ国産旅客機「MRJ」は失敗したのか 現場技術者に非はなかった? 知られざる問題の本質とは

 メルクマールというあまり聞き慣れないサイトが、「なぜ国産旅客機「MRJ」は失敗したのか 現場技術者に非はなかった? 知られざる問題の本質とは」という記事を掲載。ちょっと興味があったので読んでみました。

 記事の前段はスペースジェットの現状で始まり、開発プロジェクトが実質的な国家プロジェクトであったこと、型式証明を取得するために翻弄した原因を解説。そしてしばらく読み進んでいくと、この記事の言わんとしている核心部になります。その一部を以下に掲載します。

 JCABはMRJの審査を行う航空機技術審査センターを2004年に名古屋に設置し、FAA職員を招いた講習も受けたといわれるが、膨大なノウハウが必要な審査能力が一時の研修で体得できるわけもない。FAAに助言を求めても、FAAは外国当局の審査には関与しない。あくまでJCABが製造国の責任として型式証明を発行しなければいけないし、FAAは輸入された機体を米国の基準で審査することになる。つまり、MRJが挫折した理由の根本は、「日本という国家が、航空機の安全を国際的に担保する能力に欠けている」ことだ。

 難航するMRJの傍らで小型ジェット機ホンダジェットの成功が各所で報じられたため、「なぜ自動車メーカーのホンダが成功したのか」という声も多く聞かれた。しかしホンダジェットは日本の国産機ではない。製造会社は米国のノースカロライナにあるHonda Aircraft Companyという会社であり、米国で設計開発された正真正銘米国製の飛行機なのだ。

 日本で開発したのでは外国で売る航空機はつくれないことを、ホンダは知っていた。また、ホンダが日本で航空機を製造するなら、JCABから航空機製造事業者の認定が新規に必要で、この審査に合格するのも大変だ。つまり、「日本製ではない」ことがホンダジェットの一番大きな成功理由だ。

 経産省/NEDOは市場や基礎研究だけを見て絵を描き、三菱はそれを足掛かりにして事業に取り組んだが、肝心の型式証明を手掛ける国交省は蚊帳の外という、驚くべき体制ができあがった。これは「誰が悪い」という問題ではなく、国家プロジェクトのあり方や行政機関の整備方針など、日本という国の力が改めて問われるべき事例ではないだろうか。

 この記事は航空機製造には国を挙げて取り組まなければならないのに、日本にはその体制も風土もなかったことが失敗の原因であるとしているようです。そしてこれではいくら金と時間を掛けても、いつまで経っても型式証明は取得できないと三菱重工が判断したということが言いたいのでしょう。
  

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